いえづくりの前に考える事。

工事監理について考えてみた

監理に関する話をする前に関連法規を下に記します。

(条文そのものではありません。なるべくわかるように私流にアレンジしました。)

【建築士法第二条6】

「工事監理」とは、建築士の責任において、工事を設計図書と照合し、それが設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認することをいう。

【建築士法第三条】

法で規定する建築物(※)を新築する場合においては、法で規定する建築士(※)でなければ設計又は工事監理をしてはならない。 【建築基準法第五条の4の2】 建築主は、法で規定する工事(※)をする場合においては、法で規定する建築士(※)である工事監理者を定めなければならない。

【建築基準法第五条の4の3】

この規定に違反した工事は、することができない。

※:一級建築士・二級建築士・木造建築士 それぞれ設計または工事監理できる用途・構造・面積・階数がちがいます。 (100㎡以上の木造建築物は、この中に含まれますので、中規模の住宅は該当します。)

このように、 建てる建物の規模等によって工事監理をすることのできる建築士を定めなさいよ! しないと建てちゃだめよ!と法律でうたっています。

この法律で言っている「工事監理者」とは、現場でよく目にする、現場監督ではありません。 現場監督は施工会社に所属して、工事の段取りや、材料の発注、職人さんの手配等をする方です。 (もっとやることはいっぱいありますが、代表的なモノはこんな感じですね)

では「工事監理」とは何をするのか。 法でいってる通り設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認します。

言うのは簡単ですが、実際はとても大変です。 釘1本の種類や打ち方まで設計図書のとおりに実施されているかいないかを確認しないといけません。 コンクリートの調合の比率や、運搬時間、施工法も確認します。 断熱材に隙間がないか。雨が入ってくるような工事をしていないか。 いろいろ確認していきます。

職人さんも気を付けているでしょうし、監督さんもチェックしているはずです。 しかし、人間のやることですから間違いはありますし、設計した本人でないと理解しにくいところもあります。 (設計者と監理者が違う事もありますが、大体は本人か同じ設計事務所の者がやります)

ものを作った事のある方なら経験したことがあると思いますが、 ちょっとミスしてしまったとか、思ったようにできなかったとか、勘違いしてやり方まちがえたとか、このようなことは建築現場でもあります。

プロの職人さんでもたまにあるんです。悪気はなくても、あるんです。

そのようなとき監督さんが見つけて、手直しや材料の再発注をしてくれればいいのですが、 気付かなかったり、正解をしらなかったり、工期・予算の都合で故意に見逃してしまう事もあります。

自分の新居で、このような事があったらどうでしょう。
地震から家族を守るために、高いけどしっかりした構造にしたはずなのに・・・
冷暖房費の節約、健康の為に、高いけど断熱はしっかり入れたはずなのに・・・
製品が良くてもミス無く施工していないと何の意味もありません。
それでは困るから現場をしっかり見なきゃ!
でも、
・なにを見ていいの?
・何が正解なの?
・なんか違う気がするけど、指摘するのもなんかクレームいってるみたいでいやだな・・・
というお施主様に代わって、お施主様の立場になって、現場を見るのが「現場監理」です。

ちょこっとだけ現場の前までいって、”フムフムできちょるできちょる”っと呟いて帰ってくる監理者もいます。
確認申請書の工事監理者の欄に名前は書いてあるけど、現場に一度もいったことがない監理者もます。
大企業でコンプライアンスがうるさく、しっかり監理するように会社からお達しで出ていても 日々の業務の忙しさから、しっかり監理したくてもできない状況になり適当に記入したチェック表と、現場に行きましたよというアリバイ写真だけ撮って 会社に報告するという監理担当社員もいます。

全部とはいいませんが施工監理が同一の企業だとこういう状況になりやすいです。
もし施工監理を一緒にやる会社に工事をお願いするのなら、 現場監理の体制をしっかり確認することお勧めします。
・誰がやるのか。(設計者なのか、監理の専門スタッフか、毎回違う人が監理に行くのか)
・どんなタイミングでやるのか。(毎週なのか、隔週なのか、決まった工程があるのか)
・ その都度、写真や報告書(設計図と相違ない事のお墨付きと、相違があった場合の是正方法)はいただけるのか。

監理なんて必要ないですよ、監督が兼ねてます。と平気で言う業者はお勧めしません。
その前に照合すべき設計図すらない施工業者もありますね。そのような会社はさらに避けた方がいいと思います。

設計も重要ですが、現場監理もそれに負けないくらいに重要です。
設計事務所の見積もりを見ると、現場監理費が予想以上に高額で驚かれるお施主様も少なくありませが、 ここで述べたことを説明すると納得して頂けます。
悲しいですが、完璧な施工は不可能です。 しかし少しでも完璧に近づけることは可能です。
監理するか、監理しないかで できあがりは明らかに違います。
法律でもうたっていますが、「建築主」が「工事監理者」を定めなてはなりません。 施工業者でも、設計事務所でもありません。
もう一度言っちゃおうかな。 お施主自身が工事監理をすることのできる建築士を定めなさいよ~! しないと建てちゃだめよ~!

 

工事監理の内容の一部をリストアップしてみました。

●既存インフラ確認      (給水管・排水管・ガス管・電気・電話線 等の確認)

●配置確認          (敷地に対する建物位置・方位の確認)

●コンクリート配合計画書確認 (基礎に使用するコンクリートの計画書をプラントから提出して頂き、内容を確認)

●基礎スラブ配筋確認     (基礎の床の部分の鉄筋の種類・間隔・型枠から離れ 等の確認)

●基礎立上り配筋確認     (基礎の立ち上がり部分の鉄筋の種類・間隔・型枠から離れ・アンカーボルトの位置、本数 等の確認)

●コンクリート試験報告書   (基礎に使用するコンクリートの試験結果の内容の確認)

●土台確認          (土台の据付状況の確認)

●足場安全確認        (足場の安全性・施工性・近隣への影響等の確認)

●金物検査          (木材同士を繋ぐ金物の種類・据付方法・位置 等の確認)

●設備配管確認        (床下に敷設された給水・排水・ガス等の配管の確認) 

●基礎断熱確認        (断熱材の厚さ・種類・隙間の有無 等の確認)

●構造用合板確認       (壁・床に取り付く構造上重要な合板の種類・釘の種類、打ち付け間隔 等の確認)

●鋼製建具確認        (サッシの種類・位置・取り付け方法の確認)

●コンクリート試験報告書   (基礎に使用するコンクリートの試験結果の内容の確認)

●基礎または床下断熱確認 (断熱材の厚さ・種類・隙間の有無 等の確認)

●構造用合板確認       (壁に取り付く構造上重要な合板の種類・釘の種類、打ち付け間隔 等の確認)

●鋼製建具確認        (サッシの種類・位置・取り付け方法の確認)

●透湿防水シート確認     (構造用合板と外壁仕上材に貼るシートの取り付け方・防水テープの貼り方 等の確認)

●気密試験立会い       (建物全体の隙間の割合を専門業者に計測して頂きます)

●外壁材確認         (外壁材の施工方法・防水方法 等の確認)

●防水検査          (バルコニーや屋根材の下地の防水性能の確認)

●屋根工事確認        (屋根仕上材の施工状況の確認)

●什器確認          (便器・化粧台・キッチン台 等の種類や据付状況の確認)

●外壁周り確認        (外部に取り付く換気扇や外壁シール・電気の引き込み状況 等、足場がないと確認できない箇所の確認)

●施工会社完了検査報告書の確認(施工して頂いた会社の社内検査の検査結果や不良箇所の是正方法 等の報告を聴取)

●設計事務所完了検査     (上記の是正箇所の確認・審査機関の完了検査前に法的不備の有無の再確認)   

●確認審査機関完了検査立会い (審査機関が行う完了検査に立会い、係員の質疑等に応じます)

●お施主様完了検査立会い①  (お施主さまの確認に立会い・不備の有無の再確認、疑問点への応答 等を行います)

●お施主様完了検査立会い②  (お施主様検査の1回目で指摘のあった箇所の是正完了をご一緒に確認いたします)

 

上記の他、必要と思われる各種工事の状況を都度見ていきます。 概ね週に1回以上は現場に伺うようになります。

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