建物をつくるのはとても楽しく、そしてとても辛い。
建築物の設計というのは、経験を積むほど、知識を得るほど、難しくなっていく様な気がします。
設計の仕事を始めた頃は、けっこう簡単にプランがつくれました。 敷地の形と欲しい部屋数さえわかれば、ささっとできました。 なにも考えていなかったからこそできたのだと思います。
実際にそこに住んで、 使い易いのか、快適なのか、安全なのか、経済的なのか。
工事をするにあたり、 施工に無理はないのか、キレイにおさまるのか、無駄はないのか。
そういった事に気がまわらなかったのだと思います。 今思えばド素人もいいとこです。
机上でプランだけしていたら、もしかしたら今でも変わらずささっと描いていたかもしれません。
現場に行く機会が増えてくると、実物を見たり触れたり、 大工さんや職人さんの仕事を目にしたり、お話を聞いたりして 家がどうやって出来て行くのかがわかるようになってきます。
施工方法や手順、部材の納まりがわかると、図面に描く1本の線の意味もわかってきます。 そうなると先輩方がかいた図面をなんとなくコピーしていた頃の形だけの図面とは違ってきます。 平面の図面ですが、頭の中にはちゃんと立体が浮かんできますし、部材が見えてきます。
完成後に、お施主様の話を聞く機会が増えてくると、設計の反省点もいっぱいでてきます。 完成直後はお施主さんも嬉しくて多少の不便さも気にならないのですが、 1年がすぎ、四季を一通り経験すると、それぞれの季節に、それぞれの問題点があることを教えてもらえます。それを聞かせて頂き、次回の設計に生かせるようになってきます。
新たな工事現場では、工法や建材等、新しい気付きがあり、
お施主様 各々に、違った価値観、異なる生活スタイルがあり、
ひとつの物件に多くの学びがあります。
本を読んだり、NETを見たり、セミナーに参加したり、知識も徐々に増えてきます。 そうやって、いろんな物を考慮しながらプランしていくと ささっとなんてできなくなってしまいました。 技術もどんどん進歩しています。 法律も改正されていきます。 お施主様のライフサイクルも変わっていきます。
どの仕事も同じですが、ぼ~っとしてるとチコちゃんに叱られます。 じゃなくて世の中についていけません。 なかなか辛い仕事だな~っと思うこともあります。が、 建物をつくるのはとても楽しいものです。特に個人住宅は、マンション等とは違い、お施主様との関わりが強く、完成時の喜びを間近で感じられます。何事にもかえられないご褒美です
この記事へのコメントはありません。